キャスター宮川俊二のやさいな生活 - ちょっと粋なワイン&グルメブログ

「宝来館」岩崎昭子女将を囲む会

2011年10月24日(月)

八芳園「壺中庵」女将、岸尚子さんの呼び掛けで、

釜石「宝来館」女将 岩崎昭子さんのお話を聞く会を開かせていただきました。

岩崎さんは、旅館が大津波に襲われ、間一髪、避難される映像が大きな反響を呼びました。

会に出席された皆さんに、その映像をご覧いただくことにしました。

岩崎さんも、今は見ることができます、とご了解くださいましたので。

 

s-img_0506

 

ニュースでは全員無事、と伝えていますが、救助されるまでには奇跡のドラマがあったそうです。

裏山まで辿り着く前に波に飲みこまれ、一旦沈み、浮き上がり、

「生きなければ」という強い意志が湧いてくるまで意識の浮遊状態があったこと。

一緒に逃げてきたおばあちゃんがバスの下で「もうダメだ」と言うのを励まして救ったこと。

水中で、そんな話が出来たのは、津波に渦があって、空間ができていたのではないかということ。

何か頭に被さっていたものを取って顔を出したそうですが、それはひっくり返ったボートではなかったかと、

その空間で息ができていたのかもしれません。

 

津波の脅威、数日間の孤立を経ての救出、旅館を避難所として提供し、近所の人たちとの頑張り・・・

東北訛りの素朴な語りで聞かされる被災の現実に、参加された皆さんも涙をこらえ、

聞き入っていらっしゃいました。

進行役の僕も、涙を流しては被災された方、今、耐えていらっしゃる方に失礼だと、

こみ上げるものを必死で抑えました。

 

幼稚園でお母さんの迎えを待ちながら、お母さんを波にさらわれた5歳の子供が、

「お母さんは、泳ぎが上手だったから、頑張って、泳いで、泳いで、迎えに来てくれていたんだね。」

 

「かわいそうな子供を出さない」「かわいそうなお母さんを出さない」、

そう思っても自然の猛威は、それをゆるしてくれません。

 

発見されたご遺体の中には、身体を縄で柱に縛り付けた方がいらっしゃったそうです。

漁師さんの間では、遭難した時、行方不明になってしまっては、仲間に迷惑をかける、

そこで身体を船に縛り付けるのだと言われます。

津波が襲ってきた時、避難が間に合わないと覚悟した漁師さんは、海の男の掟に倣い、

家の柱に自らを縛り付けられたのでしょう。

そして、願いの通り、ご遺体は発見されました・・・

 

僕が釜石に伺った時、地元の方が「津波は他人を助けちゃあいけないんです」と言われました。

共通語で話されると、ちょっと冷たく感じられました。

岩崎さんに今回、「てんでんこ」という言葉を教わりました。

津波は、それぞれが、「てんでん」が、生き残ることが大切という代々の言い伝えだそうです。

それだけ、この地の皆さんは、津波と向き合って暮らしてきました。

しかし、「てんでんこ」と言いながら、なかなかできることではありません。

たくさんの方が、ひとを助ける為に自らの命を落とされました。

 

「それでも、何故、そんな土地に住み続けるのか、不思議でしょ?」と岩崎さん。

「やはり、何かが、ここに住みなさい、と言っているみたいなんです」

 

そんな「何か」を感じる人たちが、集団移転、高台移転に踏み切れるか、

僕たちもその「思い」を共有しながら、復興の道筋をご一緒に考えていかなければならないのでしょう。

 

s-img_05121

 

今、何が必要か・・・

あれから7ヶ月余り、共同の避難所から仮設住宅に移られ、ほっとされる反面、

家族を失った方々は個室に入り、深い孤独感にとらわれているそうです。

話を聞いてもらえるだけでもいい・・・

物も必要ですが、喪失感に苛まれていらっしゃる方々の心には、何かの支えが必要です。

 

二重ローン問題はようやく法案が通りそうです。

しかし、今は公共工事が優先され、商業施設や住宅には機械も職人さんの手も回りません。

宝来館」の再開もまだまだ・・・

豊富な海の幸をいただくには、もう少し時間がかかりそうです。


ページの先頭へ